ようこそ高田文化協会へ

新潟県・上越地域の文化の発信基地として52年の歴史を持ち、文芸を愛好し、地元文化の発展にさまざまな形で携わっている
市民の団体です。約350人の会員に支えられています。
昭和34年5月に創刊の同人誌「文芸たかだ」の発行のほか、文化講演会、展覧会、音楽会など様々な文化活動のお手伝いをしています。

2012年06月

 先日、文芸たかだ第319号で「文芸たかだ・井東汎賞佳作賞」の発表を行いましたが、山本直哉氏作「鈴木伍長の最期」につきまして6月24日に以下の事実が判明いたしました。

・この作品が今回の井東汎賞作品募集以前に複数の同人誌、ウェブサイト上で発表されていた。
・この作品に内容が酷似している(タイトルが異なる)作品が、過去に他の文学賞を受賞していた。

「文芸たかだ・井東汎賞」の応募要項には「創作(未発表の作品、あるいは『文芸たかだ』に過去1年間に掲載済みの作品)」という規定が明記されていました。上記の事実はあきらかにこの規定に反するものです。
この事案について協会で協議した結果、山本氏への授賞を取り消すことにいたしました。前回ブログ上で掲載しました山本氏の記事も削除しました。

 髙田文化協会といたしましては、今後このような問題が生じないようより慎重に対応してまいります。
関係各位にはご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。

 去る4月22日に第26回「文芸たかだ・井東汎賞」の銓衡会議が行われ、以下の結果となりました。

   正賞  該当作品なし
   
   佳作 古川実記 「まよひこのしるべ」
   「まよひこのしるべ」 冒頭の一節です。

  ―――寒いよ、かあちゃん。
 ひどく雪が降っていた。目を上げると、漆喰のように白く塗り込められた空から、大きな雪片が次から次へと
落ちていた。それは子どもの薄い肩に積もり、さらに小さな足を冷たく濡らした。その子は真っ赤になった手をこすり合わせ、少しでも温めようと細い腕で身体を掻き抱いた。

 ―――ごめんなさい。
 すすり泣きながらそう言った。けれど雪に凍った口は思うように動かず、白い息が漏れるばかりだった。
 人の気配が消え、物音一つしない。雪はこの世のすべてを遮るように降りしきり、その中に幼子を隠そうとしていた。

 太吉は目を覚ました。半鐘が鳴っていた。三度ずつの連打ということは火が近い。跳ね起きると刺し子袢纏に
猫頭巾を引っかけて表に出た。南の方に煙が立ち上り、闇夜に橙色の炎が気味悪く揺らめくのが見える。
 太吉が自身番に駆け込むと、同時に頭がやって来た。
「火元は伝法院の南、田原町」
 たったその一言で、火消したちは出動の準備を整えた。梯子に大刺股、竜土水に玄蕃桶を担ぐ。道具箱や鳶口を手にした人足たちが集まり、隊列を組む。太吉は纏を持ち上げると列に加わった。


 

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